第2235回例会

第2235回例会(2021年10月4日)

「子どもの学びの機会格差解決にむけての取り組み」
認定NPO法人カコタム   理事長 高橋 勇造 氏 卓話
 
認定NPO法人Kacotamの高橋と申します。この度はお話をする機会をいただき、ありがとうございます。また、昨年は寄付をいただき、改めて御礼申し上げます。
私たちは、学びの機会格差問題を解決することを目的に活動しています。その学びの機会格差とは何か。例えば、道内の高校生は約7割が進学しているのに対して、生活保護世帯は36.7%、児童養護施設の子どもは27.9%と家庭環境によって、これだけ格差が生じています。また、習い事をしているかどうかの割合では、道内のふたりの親がいる家庭では約6割が習い事をしているのに対して、ひとり親家庭では約3割となっており、学校外の教育においても格差が生じています。そのようにして、世間一般の人たちが当たり前のようにしていることが、私たちが関わっているご家庭ではそれを手にすることができないということが多くあります。周りの友だちは当たり前のように手にしていることが、手にすることができない。それが毎日、あらゆる生活場面において思い知らされます。

私たちが関わっているご家庭の約6割が年収200万円以下の生活をしています。また貯蓄は50万円未満となっています。私たちが関わる子どもたちはそのようなぎりぎりの生活のなかで生きています。そのような環境下にある子どもたちに、私たちは周りの環境に左右されない楽しい学びの場をすべての子ども・若者へ提供することを使命として活動しています。
具体的な取り組みの1つとして、児童養護施設や母子生活支援施設などの子どもを対象にした学習支援を行っています。現在札幌市内・北広島市内の13施設で行っています。1対1で学習していきます。緊急事態宣言下ではLINE電話やZoomを使って、オンラインで学習をしていました。
2つ目の取り組みとして、ひとり親家庭や生活保護世帯の子どもを対象にした学習支援を行っています。現在札幌市内6ヶ所、江別市1ヶ所、苫小牧市1ヶ所、東京都1ヶ所の計9ヶ所で行っています。こちらも1対1で学習を行います。緊急事態宣言下では、オンラインでLINEを使った学習相談やZoomをつないだオンライン自習室を行いました。
またそれ以外にも様々な学びの機会を提供しています。自然体験学習や料理教室も毎年行っています。将来就きたい職業や興味のある職業に就いている社会人にインタビューも行っています。今までにウェディングプランナーや看護師、化粧品の販売員、建築士などにお話を聞きました。
子どもの「やりたい」をカタチにするプロジェクトは、学習支援で関わる中で子どもから出た「やりたい」という声を具現化するというものです。こちらはジェットストリームというボールペンを使っている中学1年生からの「なぜ書きやすいのか知りたい」という声を受けて、三菱鉛筆北海道販売の協力を得て、なぜジェットストリームというボールペンは、書きやすいのかを約1時間をかけて説明していただきました。また、高校生の「一般のお客さんに食事を提供したい」という声を受けて、藤女子大学隈元ゼミの協力を得て、一日店長として調理をする機会を作りました。
最後に中学3年生から高校3年生の約4年間学習支援で関わった子どもで、現在私たちのメンバーとして参加している大学生Bさんの声をご紹介します。「私自身、Kacotamに出会えてなかったらきっと勉強は嫌いなままだし、経済的な面で大学進学を諦めていたと思います。それでも厳しいと言われていた大学進学を果たせることが出来たのはKacotamのおかげです。」と言っていました。そのようにして、教わる立場から教える立場へと変え、そのような人の循環が生まれています。私たちは、このような学びの場を北海道179市町村でつくっていきたいと考えています。