第 2 回クラブフォーラム

(2019年11月11日)

『 共に生きる社会を願って 』
ダウン症児・者親の会
北海道小鳩会会長
三好明子様

皆さん、こんばんは。
北海道小鳩会の会長をしております 三好明子と申します。

この度は、ダウン症のある人たちと北海道小鳩会の活動に対し深いご理解をいただき、昨年度のプロジェクター及び多数の図書のご寄贈に続き、ブルゾンをご寄贈いただき、本当にありがとうございました。
プロジェクターにつきましては、既に何度も使わせていただきました。
本当に使いやすく、とても綺麗な画像で、感謝しております。
今年の3月21日に地下歩行空間で開催しました『世界ダウン症の日啓発活動』でも、大活躍でした。
また、図書に関しましても、全道にある6つの分会にも、配分し有効に活用しております。
今年度ご寄贈いただきましたブルゾンにつきましては、来年の3月21日の啓発活動の際に使わせていただきます。
色々なサイズで作らせていただきましたので、子供から大人まで同じブルゾンを着て、統一感のある啓発活動が出来ます事を今から楽しみにしております。
また、講演会等の行事の際にも活用させていただきたいと思います。
本当にありがとうございました。深く感謝申し上げます。
また、本日このような機会を頂きましたことにも、合わせてお礼申し上げます。

●まず、北海道小鳩会についてお話ししたいと思います。当会リーフレットも用意致しましたのでご覧ください。
北海道小鳩会は、ダウン症児・者の親たちが子どもたちの幸福を求めて集い、未来に向かって活動している会です。
広い北海道ですので、地域会員の親睦や連携を深め、充実した活動を行うため、札幌、帯広、北見、釧路、苫小牧、函館の6つの分会を持っています。
それぞれの分会で、総会、講演会、学習会、学校・施設見学、クリスマス会・新年会・ボウリング大会等の楽しい活動が行われています。
また、3月21日の『世界ダウン症の日』の啓発活動をはじめとし、ダウン症についての正しい理解を深めていくために様々な機会での啓発活動も大きな活動となっています。会報も年5回発行し、会員はじめ、全道の保健所、各関係機関、全国の親の会等に送っており、大切な啓発活動の1つとなっています

現在、同じ想いを共有出来る素敵な約570の家族がいます。ダウン症は、高年齢出産が原因と言われることも多々ありますが、当会会員には20代の若いお母さ
んもたくさんいらっしゃいます。

●次に、ダウン症についてお話させていただきます。
ダウン症候群は、イギリスの医師ダウン氏によって発見されたので、ダウン症候群と命名されました。
赤ちゃんは、両親から23対の染色体を半分ずつ、もらうことによって、それぞれの特徴を受け継ぎます。
しかし、21番目の染色体だけがうまく分かれずに、1本またはその一部が余分に受け継がれてしまうことがあります。
その結果、心身に特徴的な障がいが生じてきます。
それがダウン症候群です。700~1,000人に一人の割合で生まれてくると聞いています。
この染色体の分離異常が起こる原因は不明ですが、私たち人間が生物である限り避けられない自然現象と考えられています。
また、ダウン症候群は、染色体の分離異常が原因となって起こりますが、ほとんどの場合遺伝ではありません。
転座型の場合、希に遺伝性の症例があると言われています。
ダウン症候群は染色体による先天的な異常のため、薬等で治療することはできませんが、早期訓練、早期療育を適切な指導のもとで行うことによって、発達の遅れをより少なくすることができるようになりました。
また、寿命が短いとか老化が早いとか言われてきたダウン症候群ですが、現在は医学の進歩等により、寿命も伸びてきています。
今後は、青年期以降の健康管理を含めて、いかに豊かな人生を送ることができるかが大きな課題となっています。
子どもを持つ一人の親として、自分の子どもには、素敵な人生を歩んでいって欲しい!夢を追いかけて欲しい!
そして何よりも自分の存在を大切なものとして生きていって欲しいと願うと思います。
この気持ちは、子どもにハンディキャップがある、なしに関わらず同じだと思います。親は、子どもの幸せを願います。

テレビ、新聞等で出生前診断が問題になる中で、『ダウン症』という言葉がたくさん使われています。
こうしたニュース等を見たり聞いたりする中で、ダウン症のある人たちが、ダウン症は生まれてくると困るの?
ぼくは、わたしは、生まれてこないほうがよかったの?と感じることがあるとしたら、親として本当に心が痛みます。
一人の人間として自分の存在を否定されたら、誰だって悲しくなります。
また、今この世に生を受けているダウン症のある人たちやその家族が、そして、これから生まれてくるであろうダウン症のある人たちやその家族が、肩身の狭い思いをして生きていく社会になることも危惧しています。

●最後に、ダウン症の子どもを持つ一人の親としての想いをお話し、一緒に考えていただく機会になればと思っております。
私達夫婦が34歳、長男一樹が4歳半の時、我が家の次男として宏樹が生まれました。21トリソミーですので、染色体の分離異常が原因と考えられます。
最初は、ダウン症の宏樹という思いが強かったのが、いつしか自然にありのままの宏樹と向き合うことができるようになっていました。
宏樹には、ダウン症というハンディキャップがあっただけのことだったのです。
宏樹が生まれて2週間経った頃、生まれた病院から札幌医大を紹介され受診しました。
主人と一緒に小児科の先生から、『ダウン症の疑いがあります。血液検査をしたいと思います』と告げられ、ショックを受けて帰宅した日、保健師さんから電話がありました。
母子手帳についていたハガキを投函した際に、体温保持のため保育器に入ったと書いたので、心配しての電話でした。
ダウン症の疑いがある旨を話すと次の日、すぐ訪問してくれ、こんな話をしてくださいました。
「三好さん、私前にね、重度の脳性麻痺の方とお会いしたことがあるの。その方は、一言話すにも、体全体を使いながら、とても長い時間をかけ、私にこう話してくれたの。
“今の私のこんな姿をみたら、生まれてこない方が良かったのに!と思う人がいるかもしれないけれど、私は今生きていて、すごく幸せです。
私を産んでくれた両親に、生んでくれて、ありがとう!と感謝しています。”と。
宏樹君にも、そう思ってもらえるように、頑張って一緒に育てよう!」この言葉は、その時からずっと私を支えてくれました。

2ヶ月後、確定診断が出たときは、家族を含めたくさんの皆さんに支えていただき、宏樹と向き合うことができるようになってきていました。
日本で4年生大学を卒業した初めてのダウン症のある女性で、今は講演活動等幅広く活動している鹿児島在住の岩本綾さんは、新聞のインタビューでこう答えています。
“いらない命なんてありません。出生前診断よりも障害のある人が生きやすい社会を作るほうが先ではないでしょうか”
“私は、生きている素晴らしさを日々実感しています。ダウン症があったからこそできた経験や、多くの出会いもありました。
両親には心から、生きていてよかった、産んでくれてありがとうと言いたいです。”

しかし、障がいを持っている方への色々な面での社会的な支援が整っているとは言えないことが、“生きづらさ”につながっている現状は確かにあります。
どの地域で生まれても、その子どもに何らかのハンディキャップがあるとわかった時、医療・福祉・行政がひとつとなって、その子どもと家族に対して、生まれた時から生涯を通しての一環したサポート体制が、必要不可欠になると思いますが、残念ながらまだまだ充分ではありませんし、地域格差もあります。
本人と家族と社会が感じる、障がい故の“生きづらさ”を、医療・福祉・行政がしっかりサポートすることで、障がいがあることを不幸としない社会の実現を目指すことがとても大切だと感じます。
私達夫婦は、宏樹に頑張ってもできないことは、胸をはって助けてもらいなさい!と伝えてきました。
ハンディキャップのない子どもたちは、当たり前のようにいろいろな経験を積み上げていきます。
ハンディキャップのあるこの子たちにも、自分だけでは実行が難しい体験をしっかりとしたサポートを受けて積み上げていくことが必要なのです。
宏樹は、東京一人旅をはじめとするいろいろな経験を、障がい者相談支援事業所をはじめ、宏樹に関わってくださった皆さんのしっかりとしたサポートのおかげで、実現してきました。
現在の31歳の宏樹にとって、大きな力となっています。
そして、これからの人生を生きていく大きな力となる事と思います。
ゆっくりゆっくり伸びていく、育っていくこの子たちにこそ、より多くの経験の積み上げが必要なのです。
ハンディキャップのある、ないに関わらず、人は年齢を重ねていくと、自然にいろいろなハンディキャップへと向かっていきます。
眼鏡や補聴器、杖等のお世話になりながら、人生を全うしていきます。また、病気や事故で人生の途中からハンディキャップをもつ人たちもたくさんいらっしゃいます。
全ての人が人として尊重されて、“自分らしく生きていける社会”“誰もがその人らしく、ありのままに安心して生きていける社会”の実現を強く望みます。
この社会では、実に多様な人達が生活しています。
ダウン症のある人もその中のひとりとして、みなその人それぞれの人生を当たり前に生きています。
全体的な発達の遅れはみられますが、ゆっくりでも一歩一歩確実に成長していきます。
今、多様な人々が共に生きる社会の一員として、自分自身の人生をしっかり歩んでいるダウン症の人たちの姿を皆さんにもぜひ知ってもらいたいと思います。
宏樹は今年の4月で31歳になりました。
福祉就労をしています。月曜から金曜まで仕事に行き、基本的には土、日は休みです。
土、日は余暇活動を楽しんだり、一人で街に出かけたり、友達と遊んだり、31歳の普通の青年です。
赤ちゃんの時は、元気に泣くこともできなかったのですが、療育や訓練を受け、今ではアルペンスキーの選手で、国際大会にも出場しています。
また、昨年から演劇の練習を始め、先月20日には劇団ショータイムの座長として、旗揚げ公演をしました。
本当にたくさんの方に来ていただき、大きな自信につながりました。
ダウン症の特徴である、筋緊張が弱いこと、知的障害や言語能力さえも、大好きな事に出会い、良い指導者にめぐり合えると、限りない可能性が広がっていることと信じています。
宏樹だけでなく、それぞれに合った仕事に就き、元気に働くと共に余暇も楽しんでいるダウン症のある人たちがたくさんいます。
半面、理解や良い環境がないため、生きづらさを感じている人がいるのも現実かと思います。

来年の3月21日(土)も、札幌地下歩行空間“憩いの空間”で『世界ダウン症の日』啓発活動を行います。
お手伝いの皆さん全員が、本日ご寄贈いただいたブルゾンを着て、楽しく啓発活動をしたいと思います。
プロジェクターも会の活動紹介、ダウン症のある人たちの活動の様子等の紹介に使わせてさせていただきます。
お忙しい時期とは存じますが、皆様にもぜひお越しいただけましたらと思います。

今日は、ダウン症の子どもを持つ一人の親の想いの一端をお話させていただきました。
『共に生きる社会』とはどうあるべきなのか、どんな社会だったら誰もがその人らしく、ありのままに安心して生きていけるのか。
考えていただくきっかけになりましたらと思います。本日は、本当にありがとうございました。

北海道小鳩会様より感謝状を戴きました
委員長 鈴木 隆也
社会奉仕委員会担当のクラブフォーラムにご参加頂き、ありがとうございました。
今年度の社会奉仕委員会は、昨年度の事業を継承して、北海道小鳩会様を支援させて頂いております。
フォーラムには三好明子会長と齋藤真理様にお越し頂きました。
三好会長からは、基調講演を頂きました。昨年度に引き続き今一度ダウン症や障がいを持つ方々への理解を深める機会にして頂ければ、と思います。
また、フォーラムに先立ち、北海道小鳩会様の啓発活動を支援する一助としてスタッフジャンバーを寄贈させて頂きました。北海道小鳩会様からは感謝状を戴きました。
基調講演を頂く前に、活動状況などを納めたDVDを放映させて頂きました。
三好会長の基調講演では、普段なかなか聞くことのない当事者だからこその思いや、お考えをお話し頂きました。
本当にありがとうございました。
 

引き続きダウン症についてのお話を中園先生より頂きました。
大変わかりやすくお話し頂き、ありがとうございました。ダウン症の子は家族を作ることができないという間違った考えを改めるいい機会になりました。
具体的なダウン症の方が作った子どもが歯科医師になったお話もとても興味深く自分のこれまでの間違った認識を正すことが出来ました。中園先生には今年度も突然のお願いにも関わらず快くお引き受け頂き、ありがとうございました。
今日は難しいテーマでしたが、ハンディキャップを持つ方々についての理解、そして私達ができる支援等について活発に話し合うことができました。
普段の生活では、積極的に関わる機会が少ないかもしれませんが、私自身社会奉仕事業を担当できたおかげで、また、単年度ではなくこのように複数年度で関わることで前年度に感じた気持ちや、疑問について思い返してみたり、今日、再び考える事により更に理解を深めることが出来ました。

本日ご参加の皆様が、改めて命の大切さや色々な人と助け合って生きていく事を考えるきっかけとして頂けたら、とても嬉しく思います。
北海道小鳩会様の三好会長と斎藤様にはお越し頂きありがとうございました。
参加の会員の皆様にもお礼申し上げます。ありがとうございました。