第2325回例会

第2325回例会(2024年4月15日)

「思いやりの脳メカニズム」でロータリークラブを考える
ロータリー情報副委員長 中園 直樹 会員

 人間には「注意の集中」がある。
仮説の一つは、「人間は他者が何を感じているのか」、「何を考えているか」を、無意識のうちにも推測しながら社会関係を営んでいるから、というものである。
 人間が他者の心の動きを推測したり、表情から現在の心の状況を把握したり、という事ができる能力が「心の理論」(「思いやりの脳メカニズム」)である。
「共感」とか「惻隠の情(孟子の「無惻隠之心、非人也」)も、この脳メカニズムからもたらされる。
 人間とは違ってチンパンジーは、「思いやりの脳メカニズム」を持っていない。持っていても萌芽的なレベルだ。怒りっぽいボス猿が来ても、何にボスがどう怒るのか全く理解できず、ボスがどう出るのかに、常に全身の注意を振り向けなければならない。突然、「キーッ」と怒鳴られたりしたら、原因も分からないまま、尻尾を巻いて逃げるか、頭を伏せて恭順の意を示すか、しなければならない。
 集団が大きくなるほど、集団内の様々な他者との関係で、このストレスは大きくなる。だからチンパンジーは小さな集団でしか生きていけない。
 人間の方は、「思いやりの脳メカニズム」を働かせれば、もっと大きな集団の中でも、ずっと少ないストレスで生きていける。当然、集団が大きいほど、外敵からの防衛にも、分業化しての食料調達にも有利となる。こうして人間は「思いやりの脳メカニズム」があるがゆえに、大きな社会集団を作ることができるようになり、また集団が大きくなるにつれて、ますます「思いやりの脳メカニズム」を発達させていった、と考えられている。こうして人間の脳は、他の動物とは比較にならないほど発達したというのが「社会脳」仮説で、人間がなぜ大きな脳をもっているのか?という疑問を説明する、現在もっとも有力な仮説とされている。

「思いやりの脳メカニズム」と国家やロータリー
「己の欲せざる所を人に施すなかれ」これができるのも、人間が「思いやりの脳メカニズム」を持っているからだろう。他者の心の動きを思いやることができるからこそ、自分が嫌がる事は、他者も嫌だろうと、推察できるのである。ここから、礼儀作法、道徳が発達し、法律はこの道徳を皆で守ろうという社会全体の約束である。
「思いやりのメカニズム」から礼儀作法、道徳、法律が発達し、これらの「思いやりの脳」によって、人間は見知らぬ無数の人びとと連帯して国家を構成することができるようになったとされる。
そして、この歴史、伝統、文化を共有する人々への愛着が、郷土愛や祖国愛となり、その愛が、郷土や国家を守り、発展させていったとされる。動物には国家は作れない。「思いやりの脳メカニズム」が最高度に発達した人間だけが、国家を持てるのである。

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 ここからが、私(中園)の勝手な考えであるが、その「思いやりの脳」が具現化、行動化されたものがロータリーの「service above self(超我の奉仕)」の活動であると私は信じる。皆さんどうお考えですか?
 ロータリアンは「思いやりの脳」が最も発達している人であると私は固く信じたいし、ロータリー活動の原点は「思いやりの脳」ではないでしょうか。
 私のこれまでのロータリー活動、特に国際奉仕活動は、主に南アジア、東南アジア、太平洋の島嶼国などの開発途上国でしたが、それぞれの地、場所では、歴史や文化や人々の価値観も異なることが多くて、私自身も大いに戸惑うことも少なくありませんでした。
そこで私が常に心したことはPASSION(情熱)でしたが、この PASSIONとは、P(Profit誰の為に、困っている人、利他)、A(Ambitious希望を持って)、S(Sincerely誠実に)、S(Steadily着実に)、 I(Innovative進取の気概に富んで)、O(Optimist楽天主義)、N(Never give up決して諦めない)に裏打ちされた情熱でした。それとWe can do it!でした。
まさしく、ロータリー財団の標語(世界でよいことをしようDoing good in the world 1917年アーチ・クランフ)そのものでした。