第2286回

第2286回例会(2023年3月13日)

「支え合う地域づくり」
特定非営利活動法人 子どもの未来・にじ色プレイス
代表理事 安田 香織 様

 
 2015年12月、札幌初の<にじ色こども食堂>を解説しました。
 東京都大田区で気まぐれ八百屋だんだんを経営する近藤博子さんは、「母親が精神的な病気を抱えていて、給食以外の朝食と夕食はバナナ一本しか食べられない子どもがいる」と聞き、2012年に全国初の<こども食堂>を立ち上げました。
 しかし、こども食堂の「貧困」「可哀想な子」が集まるというイメージが障害となり、札幌で<こども食堂>の理解が進まない状況でした。行政、学校、地域に協力を仰いでも「家庭の問題は自己責任」「前例がない」などの理由で活動を受け入れてもらえないばかりか、電話口で叱責されることもありました。
 ただ、地道な活動を重ねていくにつれ、<にじ色こども食堂>は開催するたびに参加者が増え、多い時には70人近くに膨れ上がる状況になりました。徐々に「貧困の子ども達が行く場所」から「地域の人たちが集まるコミュニティーの場」としての理解がマスコミの報道や口コミで広がり、現在では<こども食堂>は全堂230カ所、札幌市90カ所にまで広がりました。
 こども食堂は代表の想いが強く反映されやすいため、全国で多様な形態で展開されています。私たちの<こども食堂>では、参加者一人一人の声を聴いた上でより密接な関係を結んでいくための当たらな動きをしています。
 具体的には、昼間に親も子どもも参加できる<フリースペース事業>や、夜中に中高生が部活動の後に集える<にじ色スクール事業>では、少人数の家庭的な雰囲気を重要視した活動により子ども同士や大人との交流を図っています。このほか生活保護や就学援助を受けている世帯、親を頼ることができない若者に必要な食品を届ける<おすそ分け事業>では、当事者達の困りごとの解決から必要な支援へと繋げようとしています。
 関係者を絞り、活動を小規模にするほど子ども達との関係性が深まり、表面的には見えてこない困りごとを語り出す傾向があるようです。

 「毎日、お母さんが2,000円を置いて夜中に帰ってくる」
 食べ盛りの子ども達4人は休校している間、1日3食を2,000円で過ごさなくてはなりませんでした。
 「岡さんが学校から帰ったら『恋人に会いにいく』と行って東京に行った」
 当時、中学2年生だった女の子は5日間を一人で過ごしていました。
 「妹やお母さんから『障がい者』と言われる」
 高校3年生の女の子はほぼ全ての家事をやらされていました。
 「お母さんと一緒にいたい」
 幼少期に母親の病気の治療入院のため児童養護施設に預けられた子は、いじらしくそう言います。
 子ども達が抱えている悩みは小さなものから大きなものまで様々です。家庭によっては、親に悩みを相談できない子がいたり、悩みを親や学校に相談できない不登校の子など、行き場のない子ども達や若者達がたくさんいます。生まれた環境により、スタートラインにすら立てないのです。私たちは、そういう子ども達の存在を知った大人達が自分のできる範囲でもっと動いていくべきなのではないか、と痛感しています。
 我々、<にじプレ>が目指すのは、「どんな環境に生まれようとも…全ての子ども達が平等に愛され、健やかに育っていくことができる社会」です。
 どうか準会員として運営資金のご協力をいただきたく思います。子ども達の笑顔に変えていく活動をこれからもずっと続けていきます。