第2285回

第2285回例会(2023年3月6日)

グローバル補助金奨学生
朝倉 利晃 様

 
 英国の大学院生活では、笑顔と高いテンションが求められる。知り合いと廊下ですれ違う度に、皆満面の笑顔でHello! How are you!と聞いてくる。僕は苦手なのでいつも微妙な笑顔を浮かべて対応する。英国でのコミュニケーションでは、鉄板ネタを持っておくとコミュニケーションが円滑になる。細かいところが大事だ。Oh My God!と言わずにOh My Budda!と叫んでおく。また、運気を自分で上げることは大切だ。意味する所は戦略的に知り合いを作る。将来関わりそうな先生が授業で講義に来たら、適当な質問を考えておき質問して一度は声を交わしておくし、とりあえずメールだけ送ることもある。個人的に大事なのは我慢してでも同じ場に居ること。自然と親近感が湧き、次からの会話の敷居が下がる。
 公衆衛生の話しに移ると、高所得国では非感染症疾患(虚血性心疾患や脳梗塞)が世界の死亡順位上位10位の中で9つを占めるが、低所得国では感染症が世界の死亡上位10位の中で6つを占めている。平均余命を1960年から図示すると、先進国、世界平均では順調に平均余命が伸びているが、アフリカ諸国ではHIVの死亡がピークを迎える1990-2000年に掛けて平均余命が10年以上短くなる国がある。コロナで感染症の怖さを知ったが改めて感染症が持つ潜在的な影響の大きさを実感出来る。また、感染症に加えて環境問題も公衆衛生・医学が取り組む問題とされている。直近のIPCCからの報告書では人間の活動による気温上昇がほぼ確実とれていて、気温上昇に伴う様々な気候問題、それに伴う健康問題に焦点が当てられている。また、近年のロシアのウクライナの侵攻による死亡者数は2020年の世界の戦死者5万人弱に比較して8万~10万人と知られている。2022年は更に世界で難民が1億人を超えたことがニュースとして駆け回った。これらの問題は間接的にだが感染症と強い関係を持つ。
 感染症の排除(特定の地域で感染症の伝播がない状態)と根絶(感染症の伝播が世界で一切ない状態)の文脈で言うとポリオが上げられる。ポリオは野生1,2,3型があり、現在、2,3型が根絶されており1型がパキスタンとアフガニスタンで蔓延している。この2つの地域で蔓延している理由としては、政治的不安定が上げられる。武装闘争が起きている地域にNGOも介入が難しく、その地域でワクチン接種率が低くポリオが伝播してしまう環境が出来ている。2022年末にタリバンが女性の大学進学、労働を禁じたことに関係して多くのNGOがアフガニスタンから撤退を余儀なくされている。また、パキスタンは国土の3分の1が水没する大洪水にみまわれ、それと呼応するように政治的な不安定に陥っている。パキスタンに家族がいるパキスタン人の人ですら現在は母国に戻ることが出来ないそうだ。これらの状況などを勘案するとポリオの根絶はまだ遠くなってしまいそうだ。