第2278回例会

第2278回例会(2022年12月12日)

全日本空輸株式会社 札幌支店 支店長
田部 敏之 氏 卓話

 
 ANA 札幌支店長の田部です。この度は貴重な卓話の機会をいただき、誠に有難うございます。
まずは自己紹介ですが、自分は東京板橋で生まれ、北海道大学に入りました。大学時代は文学部哲学科に在籍するとともに、体育会ラグビー部に所属していました。北大ラグビー部は資金的にも選手の確保の面でも、恵まれた環境にあるとは言えませんが、田舎の国立大学の貧乏ラグビー部として、大学選手権を目指して真面目に頑張っているので、是非応援をお願いします。

 平成4年に全日空に入社しましたが、全日空と北海道のつながりですが、初就航から今年で68年になります。 現在北海道には1日115便を運航し、国内線収入の20%を稼ぎ出しており、北海道の皆様には大変お世話になっています。 他にもANA OPENや、日本ハムファイターズのオフィシャルスポンサーをさせて頂くなど、北海道と当社は非常に強い繋がりがあります。
 さて、「コロナ禍で何が起こったのか?」「そして我々が何をしてきたか?」をお伝えしたいと思います。ご存じの通り、コロナの航空業界への影響は全世界的に甚大で、まさに需要が「蒸発」したと言いえる状況でした。ANAグループでも2兆円前後あった売り上げが7千億円程度にまで落ち込み、20年第一四半期の最悪期には、1日に実に▲19億円ものキャッシュアウトを続ける毎日でした。全く先が見えず絶望しそうな毎日でしたが、その中でまず最初に考えたのが、航空機利用がコロナウイルスに対しても安全・安心である状況を作り、お客様にお伝えすることです。それが「ANA Care Promise」で、エアラインの評価における世界的な権威のあるSKY TRAX社から、世界で一番衛生・清潔である航空会社に認定されました。
次に、コロナ禍の1000日の間、我々が取り組んできたことをご紹介します。中国武漢で発生したといわれる新型コロナウイルスですが、街がロックダウンされる中、日本人駐在員等の帰国希望者に対して、救援機を運航しました。また、欧州からのワクチン輸送にも高度な保冷技術で取り組み、今日まで続いています。
 経営的には「小さな会社になって、コロナのトンネルを抜ける」という明確なメッセージを経営トップが発信し、固定費・変動費の圧縮を図り、航空旅客輸送以外でとにかく売り上げを立てることに腐心しました。費用の圧縮は、自助=従業員の賃金、機材売却、共助=賃料減免や融資の拡大による手持ち資金の確保、公助=公租公課の減免や雇用調整助成金と、あらゆる面で資金の流失を防ぎながら会社と雇用を守ることでした。この中では多くの仲間が会社を去っていきましたが、エンゲージメントと働きがいを維持向上していくことに全社で取り組みました。売り上げ面では、国際線機材による遊覧フライトや、機内でのウエディングなど、社員から出された様々なアイディアを実現することで、収入と社員のエンゲージメントの担保に努めました。
 直近の状況では、国内線の便数は通常期に戻り、旅客数もあと一歩と、トンネルの出口は見えつつありますが、ウクライナや円安など新たなリスクも懸念され、予断を許さない状況です。
よって、将来の成長に向けて、アバターやドローン、メタバースなどの新たなチャレンジも始めており、とりわけ「ANAあきんど」という会社を作り、「地域創生事業」に力をいれています。北海道でも、サッポロビール様、余市町様、蘭越町様、札幌市様等と、「地域創生」をビジネスとして取り組ませて頂いています。
コロナ禍の中で、たくさんのご心配と応援のお声を頂戴していましたが、これからも ANAグループは様々なチャレンジを続けながら、皆様のお役に立つ会社として存続していく所存です。今後ともよろしくお願い申し上げます。

 
(原文のまま掲載)