第1回 クラブフォーラム

(2021年8月23日)

和田精密歯研株式会社 執行役員
北海道地区主管 歯科技工士
仲田 誠一 氏

 
私達歯科技工士(DentalTechnician)は、歯科医師が作成した指示書を元に義歯(入れ歯)や補綴物(差し歯・銀歯・詰め物)などの製作・加工を行う医療系 技術専門職です。日本で技工物を作成出来るのは厚生労働大臣免許の国家資格である歯科医師または歯科技工士に限られており業務独占資格であります。
[SAFE TEETH] 安全な入れ歯で安心治療を日本は実践しており、歯科医師 歯科衛生士 歯科技工士が薬規法に基づいて世界的にも高い水準で歯科治療を維持しています。

●「歯科医院はコンビニより多く存在する」
メディアでも取り上げられているように、人口に対する歯科医院数は世界的に見ても充実しています。
これは国民からの需要があることだけではなく、口腔内を健全に保つことで長寿国家の一翼を担っているほかにありません。
弊社の経営理念には「口福」=何よりも美味しく食べることの出来る美しい口もと創りとあります。
年齢を重ねても、みんなで同じものを同じように美味しく食べ、同じように幸せを感じられる。また幸せの多くは口から始まると考えています。美味しいものを食べる、お酒を飲む、 家族や友人と話す、歌を歌うなどです。「芸能人は 歯が命」このキャッチフレーズを記憶されている方も多いと思いますが、審美も重要な要素です。
しかし、口は災いの元という諺もあります。必要の無いことは言わないほうが良いとの意味ですが、経口からコロナウイルスや風邪も感染しますし、年を重ねて口腔機能が低下すれば誤嚥性肺炎などを引き起こします。
歯科技工士は歯科医師/歯科衛生士と連携を密に取りながら、健全な口腔内を保つ大切な仕事をしています。

●しかし、歯科技工士不足は深刻を超えて危機的状況になりつつあります。有資格者約11万人の内、従事しているのは約3万5千人ほどであり、多くは他の職業に転職しています。現在職者のうち半数近くが60歳以上で高齢化が進んでいます。
歯科技工士の職業柄、職人的要素が多く長時間労働になりがちで収入面も充実していないことが若者から敬遠されています。
約15年間の間に歯科技工士養成学校は72校から47校まで減り続けており、またどの学校も定員割れをしている状況で、将来を担う技工士の輩出が出来ていません。近い将来に保険治療の技工物を作れる技工士がいないことが危惧されています。

●医療の進歩に日進月歩であり、歯科技工においても急速に転換しつつあります。
歯科ではデジタル化と表現されますが、IOS(口腔内スキャナー)を使用しての印象採得であったり、CAD/CAM装置や3Dプリンターを活用したりと、そのスピードはこの 10年で大きく進化しています。
また差し歯や入れ歯を作る素材も新しいものが次々開発されており、ジルコニア(人工ダイヤモンド)を使用した差し歯やデジタルデンチャーと呼ばれるCAD/CAMで製作する入れ歯などが開発されています。近い将来には、歯科医院に通院出来なくなったお年寄り(施設や自宅で介護されている方々)にも訪問診療時にデジタル技術によって入れ歯の作成が可能となり、食事を美味しくとれる時代がやって来ると考えています。

●歯科業界発展はもとより、すべての人の口福のため歯科技工士は社会貢献を続けてまいります。
今回、このような発表の場を頂いたロータリークラブ会員の皆様に心より感謝申し上げます。
会の益々の発展を心より祈念しております。