第 1 回クラブフォーラム

(2020年10月12日)

『 ロータリー・職業奉仕を理解する 』
竹原 巖 副委員長

ロータリーを理解するためには、職業奉仕とはどのようなものかを理解しなければなりません。
ロータリーに職業奉仕という考えを持ち込んだのは、シカゴのロータリアン、アーサー・フレデリック・シェルドンです。


シェルドンについて簡単に触れておきます。シェルドンは販売学の学校を経営していました。
当時のアメリカの商取引は「騙すよりも騙されるほうが悪い」「同業者はすべてライバル」「法さえ犯さなければ何をやっても構わない」といった、モラルのない荒廃とした状況でした。
そんな中でシェルドンは継続して経営を発展させるには、共通点があると教えたのです。
当時は詐欺まがいの商売や誇大広告が日常茶飯事でした。
シェルドンは、ロータリークラブの会員に、商取引の基本に職業奉仕があると説き、多くのロータリアンから受け入れられました。
この職業倫理を身に付け実践していたロータリアンたちの企業は、1929年にウォール街の株暴落から端を発し、1930年代後半まで続いた世界恐慌の時にも、一社も倒産することなく生き延びたことによって、その正しさを証明することができました。
日本では古くから「近江商人」の「買い手良し、売り手良し、世間良し」の『三方良し・三方両徳』という商いの基本の教えがあり、ロータリーの職業奉仕の理念とも重なり多くの職業人から共感を受け、日本のロタリーの隆盛をみることになったのだと思っております。
しかし近年、特に国際ロータリーでは職業奉仕がないがしろにされ、一時期、RI理事会では、奉仕部門から職業奉仕を排除するような動きがありました。
これを日本のロータリアンが阻止して、今日に至っております。
また、国内、地区内においても職業奉仕を理解し、学ぼうとする傾向が薄れている感がします。
しかし、当クラブは複数年にわたり、地区の職業奉仕委員長をお招きしてスピーチをお願いし、また、今日のように職業奉仕を理解する機会を作って下さいますので、心強く思っております。
さて、ロータリーを理解し、職業奉仕の重要性が分かるには、ロータリーを大きな樹としてとらえていただきたいと思います。
皆さんのお手元に私が作った下手なイラストがあると思いますので、それを見てください。
樹の根っこの部分は親睦です、そして、クラブ奉仕部門です。
クラブ内のプログラム、会報、出席、音楽などを担当する部門で、会場監督やロータリー情報なども入ります。
対外的な活動でなく、クラブ内の活動に関しては、すべてクラブに奉仕することといっても良いでしょう。
そして、ロータリーの二つの理念、フランク・コリンズが唱えた「超我の奉仕」と、もう一つのアーサー・フレデリック・シェルドンの「最もよく奉仕する者、最も多く報われる」もロータリーを支える根っこの部分にあります。


親睦の根から大きく育った太い幹が職業奉仕にあたるかと思います。
根と幹という二文字で『根幹』という言葉があるように、ロータリーの根幹は親睦と職業奉仕です。
太い幹から延びる枝枝が、社会奉仕、国際奉仕、青少年奉仕、また、ロータリー財団、米山記念奨学会などの外部に向かった奉仕活動にあたります。
枝の先に実る果実や花々は、信用、信頼、尊敬、感動、成長なども入るかもしれません。思いつくままに入れてみましたので皆さんで考えてみてください。
ロータリークラブは、専門職業人と実業職業人によって構成されております。
専門職業人は医師、弁護士、会計士、宗教家、あるいは大学の先生などが該当するかと思います。
会社経営や商店経営、あるいは管理業務を行うなど、ビジネスの世界にいる人が実業職業人です。
当クラブの専門職業人は11名で、実業職業人は32名が該当するかと思います。
専門職業人は歴史的な発生史から見て、聖職者から派生した職業であります。
中世のヨーロッパでは王様を筆頭に、領主(主に貴族階級)、聖職者、戦う戦士、市民(市民のなかには商人、職人、農民が入ると思われます)、一番下層階級の農奴に分かれており、身分の壁は超えることの出来ない厳然としたものでした。
そのような中で、唯一、身分・階級を変えることが出来たのは、学問に励んで牧師、聖職者になることでした。その聖職者から医師や弁護士という職業が生まれたということです。聖職者から発生した専門職業人は、金銭に執着してはいけないのであります。お坊さんはお布施の金額を檀家さんに要求せず「お心のままに」というはずです。お医者さんや弁護士の職業人は、本来、金銭を第一義に考えてはいけないことになります。現実の世界では、スタッフの給料や事務所の維持費などが必要なので、理想論ではありますが、原則、心構えはそうだということを理解しておいて頂きたいと思います。・遺産相続を扱った弁護士の実例1・患者さんを一番にと医院を続けた歯医者さんの実例2~具体的な内容は省略。
専門職業人の他に、ビジネスを生業とする実業人の世界があります。
実業の世界では、商品、製品、サービスを買っていただく「お客様」。
製品を作り、あるいは販売する「従業員」。物を作り売るための商品を仕入れる「仕入れ先」。
ビジネスに協力してくれる「下請け業者」「協力業者」。
そして、同じ職種の「同業者」によって構成されております。
職業奉仕の考えは、自分を取り巻く全ての人たちに対して、「真実で公平で友情をもって、みんなのためになるか」の四つのテストで接しているかを、心の中で反芻しながら、経営に取組みなさいということなのです。
しかし、ビジネスの世界では効率と利益を出すことによって、会社を維持・継続させていくことが使命なので、奉仕の心と矛盾するという葛藤が生まれます。
商品を販売し、製品を作るにあたり当然必要な原価があります。
それに適正な利潤を上乗せすることは許されることであります。
不当な利益でなく適正な利益ということを忘れないでください。

・社員、従業員の幸せを願っての経営に取り組んだ実例1
・お客様が一番の蕎麦屋さんの実例2
・お客様と製品を思いやった実例3
・業者への思い実例4~具体的な内容は省略。

このような考え方や、取り組みをすることが出来たのも、ロータリーの職業奉仕から学んだことが、自信となり信念をもって会社経営や団体活動に臨むことの出来た最大の理由です。
職業奉仕の理念を意識しなくても、当クラブの大多数のロータリアンは、病院や会社を立派に経営し社会に貢献されております。
これからも、様々な職業の会員から啓発を受け、例会で学び、全ての人を思いやる心と倫理観をもって経営を続けてください。
そうすることで、必ずや大きな成果となって報われると信じ、天職である職業を継続していただくよう希望して、スピーチの締めとします。

 


瀧澤 隆之介 委員長

本日は、職業奉仕委員会担当のクラブフォーラムとして、職業奉仕の本質を会員の皆様に考えていただくために、経験豊富なロータリアンであり、職業奉仕の研究及び実践について長年にわたって研鑽を深めてこられた竹原巌副委員長に卓話をいただきました。
最後に職業奉仕にまつわるQ&Aをご紹介頂きました、答えの部分は皆さんで考えてみてください。

Q1ロータリーの木は成長していくのでしょうか?
Q2例会出席と職業奉仕とはどのような関係にあるのでしょうか?
Q3クラブの職業奉仕委員会の活動として、どのようなものが考えられるでしょうか
Q4現役を引退して職業に就いていない会員は、どのように職業奉仕に関わることができるのでしょうか?