第2203回例会

第2203回例会(2020年8月3日)

「新型コロナウイルス感染拡大で考えさせられたこと」
若狭 博徳 会員

昨年、中国武漢より発生したといわれるCOVID-19、所謂新型コロナウイルスをニュースで知った時は、細菌兵器の研究中にトラブルでも起こしたのだろうか?くらいに見ておりました。
年が明け、札幌商工会議所遙望会会長を仰せつかっております私にとって研修目的の京都行が迫っている時、国内ではクルーズ船ダイヤモンドプリンセス号での感染拡大のニュースが日々報道されておりました。
国内の感染が広がらなければいいと思っておりましたが、日を追うごとに感染者数は増え続け、韓国への広がりがニュースに流れている中、2月7日京都に向かいました。

行程は伊丹空港発着、レンタカー移動にて2泊3日京都府内限定。
その内容は省略しますが、真っ先に感じたのは観光客が殆どおりませんでした。
とりわけインバウンド客の姿は殆ど見かけませんでした。
観光都市である京都。
その京都に観光客が全くいない。
いつも交通渋滞するところが全く渋滞していません。
序にと立ち寄った歴史的建造物のチケット売り場もその中も、疎らな人しか見かけませんでした。
夜の祇園、通りもお店も閑散として全く別世界の様でありました。

この状態をみて私が直ぐに思ったこととして、同じ観光都市である北海道も何れこうなる。
北海道はこの頃、雪まつりシーズンでしたが、我が家は子供が小さいこともあり、感染リスクを抑えるために連れていきませんでしたが、人はそれなりに出ていたと記憶しております。
話を戻して、京都の状況を見た私が考えたこととして、観光産業が総崩れしてしまう可能性が高い点であります。
またその先には、感染の収束が全く見えない事態に陥った時の我が社への影響がどれほどのものか、全く予想が出来ないということでした。
一つだけはっきりしていた事は、最悪のケースで推移した場合、弊社への悪影響は計り知れなく、先が読めないほどとなると、運転資金等が行き詰まる可能性があると思いました。
北海道へ戻り直ちに行ったことは、観光への影
響が出始めた場合、約一か月で弊社への影響が出るだろう予測のもと、資金の借り入れのタイミングとその額を検討することでした。

弊社は食品の包装用フィルムを製造販売しております。
製造時には衛生上オペレーターは手洗いや消毒、マスクの着用は必須です。
切らすわけにはいかないので通常よりも早いタイミングで普段より長いスパンでのストックが必要と考え、早期に発注しました。
しかしながら世の中の在庫がひっ迫したことにより我々が入手出来たのは4月でした。

日本の食品流通においてはその殆どの物が何某かの包装をされています。
つまり食品包装にも様々な包装形態、素材、加工方法等とてつもなく多岐にわたる世界です。
一昨年入会後には先代からの継承を踏まえて現在のお話をいたしました。
今日はもう少し踏み込んだ内容です。
現在の売上構成において重要なファクターとして

1コンビニエンス商材
2業務用商材
3高級菓子(土産物を含む)
4保存性を高めた食品(レトルトカレー)などがあげられます。
これらの商材が日常的に流通していたものが、コロナウイルスの影響を受けどのように変化していったかをお話しします。

4月学校が休校となり、食べ盛りの子供たちが1日中家に居るという状況になりました。
また経済活動では、テレワークやリモートなどの在宅勤務が推奨され、家に居る機会が増えました。
結果として食に関してはこれまで以上に家計を圧迫することとなりました。
また、オフィス街から人が消えた為に中心街のコンビニは相当業績を落とされた様です。
そんな期間に売れたものは次の通り。

・パン(とりわけメロンパンと食パン)、・即席麺を中心とする麺類、
・冷凍食品等です。

面白いのは食パンです。
コンビニでは¥130~150に対し、スーパーマーケットでは同じ物が¥65~75で売られております。
消費者はコンビニへは行かずスーパーマーケットにて購入しました。

食パンに並ぶメロンパン。
この度のコロナの影響を受けて子供たちはメロンパンが大好きなことが判明したそうで、言われてみればどこのスーパーマーケットにもメロンパンが山積みされていましたっけ。

このように同じ商品でも消費者は大変シビアに購入されておりました。
結果的にスーパーマーケットの業績は前年対比プラスにて推移。
逆にコンビニは昨年対比では若干のマイナスにて推移しているようです。
弊社はコンビニ商材が一つの柱であり、若干ではありますが前年割れとなっております。

業務用商材は全国的に過去に類を見ないほどの落ち込みです。
外出自粛により飲食店が休業に追い込まれました。
その飲食店は食材を全て内製化はしておりません。
たとえば調味料などは仕入れですが、関連は全て供給が停止しました。
メーカーも在庫が膨らみ資金が寝てしまい、調整の為に生産は停止します。
報道もされないので知られておりませんが、業務用商品の落ち込みは著しく低下しており、全国規模であります。

高級菓子類は各空港でお土産、百貨店で通常販売と催事にて販売されますが、人の往来が規制されることにより施設利用者がいなくなる訳で、当然そこには購入者がおりません。
全く売れなくなり長期在庫となってしまいます。
しかしながら高級品は比較的に賞味期限が短く、店頭にあるものは当然、欠品が許されないこのご時世メーカーのストッカーにもふんだんに在庫がございます。
期限切れの商品は廃棄という選択肢しかありません。
とても大きな経済損失と言わざるを得ません。

最後にレトルトカレーです。
これはナショナルブランド品が良く売れております。
超低価格にて販売されるレトルトカレーは保存性も良く手軽であることから広く利用されておりますが、北海道内での生産は一つもございません。
地元生産はスープカレーが中心ですが、生産数が絶対的に少量であり、価格が高くなってしまう事も手伝って大量に販売される事はありません。
しかしたまには違ったものというニーズに引きずられ若干良好な動き方であります。

以上が弊社の製造する商材の動向で、単月では昨年対比半分以下となった月もございました。

弊社(株)北海サンコーという会社の商品はございません。
中身を作ってはいないのです。
包装フィルム製造なので当然ですが、A社の印刷を施されたフィルムをB社へ販売することはありません。
全てカスタムオーダーの為転売など都合よく対応する事は不可能です。
商品の需要が無くなると製造するものが無くなり、製造要員スタッフが会社へ来て遊んでしまう事態になってしまいます。
何とか雇用を守りたいところですが、固定費も出ないほどの落ち込み様です。
4月に難解と言われた雇用調整助成金を私が申請し1回で承認を頂きました。
使えそうな手段は一通り手配し獲得して参りました。
それでも業績の落ち込みを補うことは出来ません。
政府系金融機関からの資金調達を行い、万が一に備えております。

この度のコロナにより考えさせられたことは、これまでは付加価値創造というテーマに沿い高級品の鮮度維持やフードロス低減などを中心とした提案を軸として展開してきましたが、世界的に人の流れが止まり、経済が停止寸前までに陥ることは私自身想定もしておりませんでした。
反省として、人の生活により根差した必需品における販売チャンネルの構築が必要であるという事。
また災害等が発生した場合においても必要とされる商材への開発を行う必要性を感じております。
それを踏まえ如何なる状況下にあっても安定した経営基盤を目指し、雇用状況の安定化、キャッシュフローのさらなる余裕など、クリアーしなければならない経営課題は山積しております。

先ずは新型コロナウイルス感染の早期収束を実現し、落ち込んだ経済を立て直すきっかけとして来年の『東京2020』の実現を願います。
更にはこの教訓を受けてこの先にまた起こるかもしれない、不測の事態に備えた仕組みづくりを考えておかなければならない事と思います。